日本における「新薬」と「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」の承認制度は、厚生労働省および医薬品医療機器総合機構(PMDA)が中心となって運用しており、以下のような特徴と手順があります。
日本の医薬品承認制度の概要
1. 新薬(先発医薬品)
定義:
- 有効成分、投与経路、効能・効果などが初めて医薬品として承認される薬剤。
- 海外ですでに承認されていても、日本で初なら「新薬」として扱われる。
承認手順:
ステップ |
内容 |
① 基礎研究・非臨床試験 |
細胞・動物実験で安全性と有効性を確認 |
② 治験届提出 |
PMDAへ治験の実施計画を提出 |
③ 臨床試験(治験) |
第I相(安全性)、第II相(有効性)、第III相(比較試験) |
④ 新薬承認申請(NDA) |
試験結果と製造・品質データを提出 |
⑤ PMDAによる審査 |
書面審査と実地調査、安全対策の確認など |
⑥ 薬事・食品衛生審議会での議論 |
必要に応じて専門家による検討 |
⑦ 厚労省による承認 |
医薬品として正式に販売可能に |
⑧ 薬価収載 |
中央社会保険医療協議会(中医協)で保険償還価格を決定 |
期間:
- 開発から承認まで10年程度かかることもある。
- 審査期間は通常1年程度(優先審査制度あり)。
2. 後発医薬品(ジェネリック医薬品)
◆ 定義:
- 先発医薬品の特許が切れた後に、同じ有効成分で製造・販売される医薬品。
- 効果・安全性が先発薬と同等であることが求められる。
◆ 承認手順:
ステップ |
内容 |
① 製剤設計・非臨床試験(必要な場合) |
先発薬の品質・安定性に基づいた設計 |
② 生物学的同等性試験 |
人体内での薬の動きが先発薬と同等か確認(通常は第I相レベル) |
③ 後発医薬品承認申請 |
有効成分、製法、試験結果をPMDAに提出 |
④ PMDAによる審査 |
データの妥当性、安全性、製造体制を確認 |
⑤ 厚労省による承認 |
薬価収載を経て保険適用医薬品に |
◆ 期間:
- 開発から承認までは2~3年程度。
- 先発薬と比較して短期間・低コストで開発可能。
比較表:新薬と後発薬の違い
項目 |
新薬(先発医薬品) |
後発薬(ジェネリック医薬品) |
承認機関 |
厚労省 / PMDA |
厚労省 / PMDA |
開発期間 |
約10年 |
約2~3年 |
臨床試験 |
必須(I~III相) |
原則不要(同等性試験のみ) |
承認根拠 |
有効性・安全性・製造法などフルデータ |
生物学的同等性の確認 |
費用 |
高額 |
低コスト |
薬価 |
高い(特許期間中) |
安価(原則最大50%以上低い) |
保険適用 |
原則適用 |
原則適用 |
特許 |
新規性あり(特許保護) |
特許切れ後のみ可 |
品質管理 |
製造所ごとに厳密 |
同等品質の担保が必要 |
補足事項
- 新薬にも複数の「改良型」が存在し、たとえば新たな投与形態(口腔内崩壊錠、貼付剤)などが「新薬」として再承認されることがあります。
- 日本では「後発品の品質不信問題」が時折報道され、信頼性の高い製薬会社の選定が重要とされています。