寄生虫による食中毒とは?
寄生虫性食中毒とは、寄生虫やその卵・幼虫が含まれる食品(特に魚介類・肉類・野菜など)を摂取することで感染し、腹痛・下痢・嘔吐・発熱・アレルギー反応などの症状を引き起こす食中毒です。日本では昔に比べ減少傾向にあるものの、「アニサキス症」など一部の寄生虫感染症は現在でも頻発しています。
主な寄生虫と感染源
寄生虫名 |
主な原因食品 |
症状 |
備考 |
アニサキス(線虫) |
サバ、イカ、アジ、サンマ、サケなど生魚 |
激しい腹痛、吐き気、アレルギー様症状 |
生食で感染。内視鏡で虫体除去が必要なことも |
クドア・セプテンプンクタータ |
ヒラメ(養殖) |
軟便、嘔吐、下痢 |
冷蔵庫でも死なない。加熱・冷凍で防止可能 |
旋毛虫(トリヒナ) |
野生イノシシ、クマなどの生肉 |
筋肉痛、発熱、むくみ、重篤化例あり |
加熱不足のジビエが主因 |
有鉤条虫/無鉤条虫 |
豚肉/牛肉(生・加熱不十分) |
下痢、腹部不快感、寄生虫が糞と共に出る |
寄生期間が長く、体内で発育する |
肝吸虫(肝ジストマ) |
淡水魚(モツゴ、タナゴ等) |
肝機能障害、黄疸、発熱 |
生食や十分加熱しない調理法で感染 |
回虫(ヒト回虫) |
汚染された野菜・果物 |
腹痛、吐き気、発熱、腸閉塞 |
有機肥料(人糞)使用などで野菜に卵が付着 |
トキソプラズマ |
豚・羊・猫の糞に汚染された肉や野菜 |
発熱、リンパ腫大、妊婦感染で胎児に影響 |
加熱不十分な肉料理や土付き野菜に注意 |
ジアルジア/クリプトスポリジウム |
井戸水、生野菜、水道水の事故 |
下痢、水様便、腹痛 |
水道水汚染が主原因。塩素耐性があるものも |
症状の種類と特徴
感染後の症状 |
原因寄生虫の例 |
備考 |
激しい腹痛(急性) |
アニサキス、クドア |
食後数時間で発症、持続的な痛み |
下痢・嘔吐 |
クドア、ジアルジア、旋毛虫 |
軽症例も多いが集団感染に注意 |
発熱・筋肉痛・倦怠感 |
トキソプラズマ、旋毛虫 |
感染後数日で全身症状に |
アレルギー症状(蕁麻疹・呼吸困難) |
アニサキス |
アニサキスアレルギーと呼ばれる |
予防方法
加熱処理が基本!
食材 |
加熱条件 |
理由 |
魚介類(アニサキス対策) |
70℃以上で数秒 |
幼虫は加熱で死滅 |
肉類(豚・ジビエ) |
75℃以上で1分以上 |
旋毛虫・トキソプラズマ予防 |
ヒラメ・淡水魚など |
- |
生食は避ける(クドア・肝吸虫など) |
冷凍処理も有効(アニサキス)
- マイナス20℃以下で24時間以上冷凍 → アニサキスは死滅
※家庭用冷凍庫では不十分なこともあるため注意が必要です。
その他の予防策
- 野菜や果物はよく洗浄し、皮をむく
- 信頼できる水源(上水)を使う
- 井戸水や河川水をそのまま飲まない
- 野生動物の肉(ジビエ)を生で食べない
国内でよく見られる寄生虫感染の傾向
- アニサキス:日本では特に件数が多く、2020年代も報告増加中
- クドア:養殖ヒラメを原因とする食中毒が急増
- ジビエ系(旋毛虫・条虫):流行とは言えないが、地方や趣味の狩猟で一定数発生
感染が疑われる場合の対応
- 医療機関へすぐに受診
- 摂取した食材・調理法を伝える
- アニサキスは内視鏡で虫体除去が可能
- 条虫や回虫などは駆虫薬(メベンダゾールなど)で治療可能